大リストラの第1弾として、2,700人の人員削減を図っている日本航空(以下、JAL)が、特別早期退職者に対して「太っ腹」な条件を提示していることが話題となっている。
JALが出した太っ腹な条件とは、退職金の割り増しと、退職後も本人及び家族に対し航空券を支給し続けるというもの。「こっちの水は甘いよ」といわんばかりの条件で手っ取り早く早期退職者を募る心積もりだと見受けられるが、JALの再生には公的資金が使われる。公的資金ということはすなわち我々が払っている税金の一部なのだ。これでは異論が出そうである。
JALは退職者を募るにあたり、退職金を抑えてコスト削減を狙っているが、それでは退職希望者が大勢出るはずもない。航空券支給はJALの苦肉の策といえるが、これによりコスト負担は増加するためすんなりと受け入れられるかはまだ不透明なままだ。
JALは現役社員の福利厚生の一環として、毎年国内線の片道航空券24枚と1割自己負担ながらも国際線の往復航空券4枚などの航空券を支給している。この航空券は社員本人のほか、配偶者や父母、社員の子供などの家族が利用可能となっている。関係者の話によると、JAL側は早期退職者に対しても現役社員とほぼ同じ条件で、勤務年数と同じ年数の間航空券を支給するという条件を出しているのだ。ただし、支給は定年退職年次の60歳まで。現役社員に対する条件が変更になれば、早期退職者への支給もその変更に準じることになっている。
たとえば国内線を羽田-鹿児島間の片道普通運賃41,200円(2010年2月25日現在)で換算すると、年間24枚航空券が支給されるので988,800円に相当する。国際線ではどうかというと、仮に成田-ニューヨーク間の往復エコノミー運賃300,400円(同)で換算すると、年間4枚で1割自己負担なので年間1,081,440円となり、国内線と国際線を合算すると2,070,240円相当にもなる計算だ。この条件で20年支給するとして、早期退職者2,700人全てに同等に支給すると、コストは1,000億円を超えることになる。
また、早期退職者に対して航空券を支給するとなると、現役社員への支給も当面続けられると見られる。厳しく大幅なリストラを断行するJALにとっては、コストの問題で大きな矛盾点となりそうだ。
この矛盾点を改善しないまま「甘い」条件として続けていくか、それとも見直しを図るかでJALの今後の再建プランも変わってきそうだ。
JAL